145:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 11:51:37.99 ID:OU1b3DXA0
「……母さんが、演奏旅行について一緒に世界を回らないかって、誘ってくれてる」
そう告げると、透子は目に見えて動揺した。
「駆くん……なに言ってるの? 駆くんがもうすぐここからいなくなるかもしれないってこと?」
ここに残ったって――そう思うことを止められない。
近づこうとすればするほど、知ろうとすればするほど、果てしない距離を感じる。
透子は生まれたときから十七年、この街の中で暮らしてきた。
対して俺は、この街にやってきて、まだ一ヶ月しか経っていない。
俺が透子と一緒に過ごした時間はあまりに短い。
俺が透子と一緒に見てきた風景はあまりに限られている。
どんなに強い気持ちを抱いたって、その事実は変えられない。
このままここに残ったって――高校卒業までの数ヶ月を透子と一緒にいられたって――きっと俺たちの間にある溝は埋められない。
どうしたって、否応なく、情け容赦なく、その瞬間はやってくる。
「いつか不意に訪れる、《唐突な当たり前の孤独》をまた経験するのは、もういいかなって」
どこに留まっても、誰に出会っても、俺が流れ者である限り孤独は付いて回る。
ならば、ひとところに留まろうとしなければいい。
孤独に抗うことも叶わず、孤独を受け入れることも怖くてできないのなら。
どこまでも、いつまでも、逃げ続けるしかないのかもしれない。
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