147:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:02:53.61 ID:OU1b3DXA0
*
「……ただいま」
俺たちが家に帰りついたとき、演奏の準備は既に整っていた。母さんはピアノの前に、透子の家族はその後ろに並んで、座っている。
「お姉ちゃん、早く早く! もう始まっちゃうよ!」
待ちきれない、といった様子の深水陽菜。
「二人とも、そのへん適当に座って」
父さんに促されて、俺はピアノが横から見える位置に腰を下ろす。透子も俺の隣に座った。
「……あれが本当に《未来の欠片》なら……」
どこか自分に言い聞かせるように、透子は囁く。
「来年の花火をまた二人で見るってことだよね?」
それは問いかけではなく、願い事を唱えるようだった。
透子の横顔は心細げで、今にも泣き出しそうだった。
そんな透子を見ていられなくて、掛ける言葉もなくて、俺は俯く。
すると、透子の手が、そっと、俺の手に触れた。
にぎわう祭りの人波の中、はぐれないよう、手を差し伸べるように。
俺は、せめて今この時間だけはと、透子の手を固く握り返した。
そして、母さんの演奏が始まる――――――。
171Res/212.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20