【グラスリップ】透子「かけるくん?」
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148:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:15:17.42 ID:OU1b3DXA0
 †

 あの夏祭りから数年が経ち、俺もそれなりに分別がついてきて、ようやく理解した。

 街から街へと飛び回る俺には、同じ場所で、同じ顔ぶれと、長い時の中で思い出を共有することができない。

 俺とみんなの間には、忘れられない時間や、忘れられない場所というものがない。 

 だから、何かの拍子に、みんなは俺のことを忘れてしまう。

 それは、しかし、俺の生き方が今のようである以上、仕様のないこと。

 当たり前のことなのだ。

 当たり前なのだから、それは俺が構えていようといまいと、不意を突いていつか必ずやってくる。

 ゆえに、俺は『それ』をこう呼ぶことにした。

 唐突な、当たり前の、孤独。

 そう名前を付けてからは、以前ほど頻繁に、深く傷つくことはなくなった。

 けれど、名前を付けて、はっきりと意識するようになってからは、無視もできなくなった。

 どこにいても、誰といても、自分の中にぽっかりと空いた欠落の存在を意識してしまう。

 でも、もしも、特別な場所で、特別な存在と一緒にいられたら?

 何かが変わるのだろうか?

 《未来の欠片》に抱く淡い期待に似た儚い空想。

 それはしかし、怖い想像でもあった。

 コインの裏表のように、希望はたやすく絶望に変わる。

 ――もしも、何も変わらなかったら?

 特別な場所で、特別な存在と一緒にいても、この孤独が消えなかったら?

 他にどうしようもないなら、方法は一つしかないだろう。

 どこにいても、誰といても、孤独を感じてしまうなら。

 どこにもいようとせず、誰ともいようとしない。

 それしか、ないのかもしれない。


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