149:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:20:30.60 ID:OU1b3DXA0
<第12話 花火(再び)>
母さんの演奏が終わりに近づいたときだった。
繋いでいた透子の手に、急に力がこもる。
振り返れば、透子は茫然と、どこか遠くを見つめていた。
何か、あったのか――?
また、透子にしか見えない、何かが……。
俺は透子が話してくれるのを待つ。
透子は俯き、ぽつりと呟いた。
「なんでも……なんでもないの」
その『なんでもない』は、とても遠いところから届く、別れの言葉のように聞こえた。
ほどなくして、母さんの指が鍵盤から離れ、演奏は傍目にはつつがなく幕を閉じる。
リビングに拍手の音が満ちて、厳かな空気から一転、華やいだ雰囲気に変わる。
その直後だった。
「っ――透子!?」
透子は、長く過酷な旅からやっと故郷へ帰りついた旅人のように、その場で意識を失った。
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