15:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 23:37:18.67 ID:DvK9a+dU0
『何はともあれ、今日の約束に深水透子がどう応じるかだ』
『彼女の協力は必要不可欠なんだから、うまくやれよ』
わかってる……やれるだけのことはやるさ。
決意を固めると、俺は逸る心を鎮めるため、母さんの演奏に集中する。
深く呼吸をして、身体の力を抜いていく。
そうして音楽に聴き入り、無心になれたかと思った、次の瞬間だった。
《――あなたの欠片は見つかった?――》
「っ……!?」
またしても、かつてないくらい、はっきりと聞こえる《声》。
それも俺のじゃない――『深水透子』の《声》だ。
「……油断した……」
母さんの演奏を聴いていると《声》を聞きやすいのは、わかっていたはずだ。
ただ、『深水透子』の《声》が聞こえるというのは、完全に想定外。
これは……しかし、やはり彼女が何らかの鍵を握っているということなのか?
「済まないな、部屋の準備が間に合わなくて――」
聞こえた《声》について考えを巡らせていると、ダイニングにいた父さんが話しかけてきた。
庭のテントのことで詫びられたが、好んでああしているのは俺だ。今までふらふらと各地を飛び回ってきたから、急に自分の部屋ができるのは違和感があった。
「そうだ、これから出かけるから、昼飯いらないよ」
そう伝えると、父さんは冗談めかして返した。
「なんだ、デートか?」
デート――言われて、俺ははたと気づく。
同年代の女の子と待ち合わせるのは、客観的に見れば、そういうことになるのか。
「……うん」
まさか『《未来の欠片》の正体を探るため』とも言えず、俺は頷いた。
それにしても、デート、か。
昨日喫茶店で会った深水透子と、彼女の友人たちの姿が思い浮かぶ。
たが、今更後には引けない。
俺にできるのは、俺の我儘で起こる面倒が少しでも小さくなるよう、祈ることくらいだった。
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