16:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 23:46:05.92 ID:DvK9a+dU0
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来ないという可能性も考慮していただけに、女の子一人が同伴しての登場とは、昨日の突貫はかなりの成果を上げたと考えていいだろう。しかし――、
「やあ、こんにちは。君は昨日の……」
「永宮です」
同伴者がこの眼鏡の子――永宮となると、かえって対応は難しい。彼女に下手なごまかしは通じないだろう。何もかもを喋るわけにもいかないが、話せる範囲で誠意を見せるしかない。
「永宮は、透子が心配でここにきた?」
答えがイエス以外にありえないのは、俺を睨む永宮の表情でよくわかった。
腹の探り合いでは埒が明かない。ここは単刀直入にいこう。
「どうしたら君の信頼を得られる?」
「透子ちゃんに近づかないで!」
拒絶――永宮は、得体の知れない俺を端から信用していないらしい。
となれば、信じるか信じないかではなく、損か得かで決断を迫るのがいいか。
「……もし、俺が透子の悩みの一部を解決できるって言ったら、どうする?」
確証はないが、起こった現象や透子の反応から、俺はある仮説を立てていた。
「透子には、何かきっかけがあると、幻覚のようなものが見えるんじゃない?」
あの花火の日、それまで《声》だけだった俺の《未来の欠片》に、《映像》が付随した。
もし、その変化を齎したのが透子なら、その《映像》はきっと彼女に由来するもののはず。
その先は俺の体験からの類推でしかなかったが――、
「さっちゃん、私、沖倉くんと話したい」
どうやら、そう的外れではなかったようだ。
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