【グラスリップ】透子「かけるくん?」
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151:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/18(木) 12:58:33.29 ID:OU1b3DXA0
 ――だが、現実はそうではなかった。

『どうしたんだ?』

『……なんでもない』

 そう、口が動くのが見える。

 俺を探しているようなそぶりはなかった。

 俺との約束も、俺の存在すらも、忘れてしまったように。

 みんなの姿が人ごみに紛れる。

 残された俺は立ち尽くすしかなかった。

 呼びかける気にも、追いかける気にもなれない。

 今のみんなに声を掛けたら、初めて会うような反応が返ってきそうで、たまらなく怖かった。

 そんな俺をよそに、花火の打ち上げが始まる。



 どんっ――!



 肌がびりびりと震えるほどの轟音。

 その一発を皮切りに、爆音は途切れることなく続いた。

 誰もが足を止め、顔を上げて、空を見上げる。

 俺に目を留める人など、どこにもいなかった。

 みんな、まるで俺が見えていないみたいに。

 誰一人、俺がここにいると気づかない。

 どうして――?

 胸が痛くなって、ぎゅっと手を押し当てる。

 誰か――。

 助けを求めるように、声にならない声を出す。

 誰か……。

 返事はない。どこからも。誰からも。

「――――――」

 つぅ、と透明な雫が零れ、頬を滑り落ち、ぽつ、ぽつ、と爪先に当たって砕ける。

 ひゅ、と火の玉が打ち出され、どん、どん、と頭の上で弾けては、色をばらまく。

 滲む視界は、いくつもの色が映りこみ、出来の悪いステンドグラスのようだった。

 しゃくりあげるのを堪えようと、重たい扉を閉ざすように力いっぱい瞼を下ろす。

 涙が溢れ、一面の色ガラスは跡形もなく散らばり、俺の目には何も映らなくなる。

 ただ、花火の音だけが、不粋な訪問者のように、俺の鼓膜をしつこく叩き続けた。


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