152:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 13:37:53.27 ID:e2KAc5lx0
<第13話 流星>
倒れた透子をソファに寝かせ、目覚めるのを待った。
父さんや母さん、透子の家族たちは、俺たちに気を遣ってか庭に出ている。
そして客観的には十数分、体感ではその五倍くらいの時間が経った頃、透子はようやく目を覚ました。
「大丈夫か?」
そう呼びかけて、俺は透子の家族にも知らせようと立ち上がる。すると、
「――行かないでっ」
ぱっ、と意外なほど強い力で腕を掴まれ、引き止められる。
透子は冬の寒空の下をあてもなくさ迷ったあとのように蒼白な顔をしていた。俺は激しい後悔に駆られる。
「……俺のせいだ」
「違う。私も駆くんと一緒に、お母さんのピアノの演奏を聴きたいって思った」
透子は俺を庇うように言ってくれる。しかし、
「俺には何も聞こえてはこなかった。でも、透子は気を失うほどの何かを感じた」
「実験は成功したってこと……?」
「……かもしれない。だけど、俺は透子を危ない目に遭わせたんじゃないのか……?」
分かり合おうとして、近づき過ぎた結果がこの有様だ。
「私、平気だし、それに――」
透子が何か言い掛けるが、窓をノックする音に遮られ、透子の父親がリビングに戻ってくる。
「……やっぱりひとところにいようとすると、他の人を余計なトラブルに巻き込むことになる……」
俺が孤独に苛まれるだけならまだしも、透子を危険に晒すなんて論外だ。
やはり、ここに残ることはできない。早々に立ち去らなければ――と、
そう考えていた俺の耳に、予想外の言葉が飛び込んできた。
「私、もう少しここにいたい」
透子の発言に、深水陽菜が「お姉ちゃん?」と訝しむ。俺も同じような気持ちだ。
「確かに、もう少しじっとしてたほうがいいかも」
しかし、透子の母親は、俺にはわからない透子の意思を汲み取ったように、透子の背中を押した。
「……戻ったら、蜻蛉玉、作りたい」
決意を固めるように呟く、透子。
彼女の中で何か変化が起きている――そう感じるけれど、演奏中に彼女が何を見たのか聞かされていない俺には、それがなんなのかわからない。
結局、透子は一人、うちに残ることになった。
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