155:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 13:54:41.33 ID:e2KAc5lx0
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いつかの井美雪哉のように、高山は俺を外へ連れ出した。目的地はカゼミチとのこと。用件も察しがつくので俺は従った。
以前会ったときより随分と吹っ切れたような、軽やかな足取りで歩く高山に続き、しばらく街を歩いていく。
すると、高山はとある坂道の下までやってきたところで、
「ちょっと、休憩」
と、木陰にぽつんと置かれたベンチに腰を下ろした。俺も足を止めて海に視線をやる。
「ヒナちゃんから聞いたけど、家でお母さんのピアノ演奏会やったんだって?」
「……演奏会ってほどじゃない。もっとささやかなものさ」
そう返しつつ、頭の隅で、深水陽菜から聞いたなら透子が倒れたことも知っているだろう、と考える。
けれど、高山は今はその話題に触れるつもりがないのか、俺たちの頭上に広がる青空のように明るく言った。
「次やるときは、ウチも呼んでよ」
「高山は――」
「やなぎ」
ぴしゃりと訂正が入る。俺は念のため振り返って確認する。高山は微笑した。
「やなぎでいいよ」
「……やなぎは、クラシックに興味あるのか?」
「実はよく聞いてる」
――あるいは出会い方が、もしくは世界が異なっていれば。
俺は高山やなぎと……それに井美雪哉や、永宮幸や、白崎祐と、友人になれたのかな――。
そんな突拍子もない空想をしてしまうのは、強い日差しのせいか、あるいはうるさいくらいに鳴きしきるクマゼミのせいか、そのどちらかだろう。
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