163:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:23:14.31 ID:e2KAc5lx0
「その俺は楽しそうだったかい?」
「うんっ、とっても」
透子の笑顔を見る限り、その世界の俺はかなりうまくやっていたらしい。
それはたぶん、かつて俺が空想して、『なりたい』と思っていた俺だった。
「それは、よかった」
夢が一つ叶ったような、重い荷を下ろしたような気持ちで、ため息がこぼれる。
《欠片》の中でそんな俺を見たのは、透子がそれを望んでくれたからなのだろうか。
自分だけの特別な場所を持たない、現実の俺の、ささやかな希望を叶えるために?
それだけじゃない、透子は俺の《唐突な当たり前の孤独》を知ろうとして、果敢にもあれに向き合ってきたという。
誰とも分かち合えないと思っていた、この胸の痛みに。
煌めくガラスの向こうの、《欠片》の世界で。
「《未来の欠片》って、なんだったんだろう……」
「もう、その言葉はそぐわないかもしれないな」
「……お母さんが――」
「え?」
「ううん、なんでも……」
何か言いかけて、結局口ごもる透子に、俺は思わず苦笑してしまう。
透子が不思議そうにこちらを見てくるので、俺は言ってやった。
「また透子の『なんでもない』が始まったって思ってさ」
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