164:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:29:06.26 ID:e2KAc5lx0
正直、透子の『なんでもない』には随分やきもきさせられた。
けれど、今はそれも透子らしさだと思える。
俺も少しは透子のことをわかってきたんだ。
「でも、透子がそう言うときは、いつも大切なことがあるときなんだろ?」
「……私って、わかりやすい?」
ちょっとムキになったように言い返す透子に、そうでもない、と俺は答える。
すると、透子は考えを整理するように、閉ざしていた胸の内を明かしてくれた。
「そうか、そうかも……大切なこと」
透子は《欠片》について、思うところを聞かせてくれる。
「あの日、花火大会の日、駆くんが見えた。あれは偶然?」
「少し、違うと思う。偶然なんかじゃない。あの時……見たいと思ったから見えた」
それは、答えになってないかもしれないけれど、俺なりの結論だった。
俺にとっての《欠片》は、導きの光。
こだまのように、俺の心のうちにある望みを反響するもの。
曖昧な希望には曖昧な《声》が返ってきた。
透子の声が聞きたいと願えば透子の《声》が聞こえた。
そして《欠片》ではない、透子の存在そのものを求めたとき、俺は《欠片》を聞くことができなくなった。
「あれは、未来なんかじゃなくて――」
透子も、《欠片》がなんだったのか、自分の言葉で答えを出そうとしていた。
「まだ起こってない、だけど、きっと、これから起きること」
考えを言葉にすることに慣れていないようで、そう口にして透子は混乱する。
「あ、あれ? これって、同じ意味?」
考えを言葉にすることに慣れている俺は、《俺》にでもなったように相槌を打つ。
「同じ意味で言ったのかい?」
「うえ、ああ…………違うかも」
「だったら、それは違う意味なんじゃないか?」
そう手助けをすると、透子の表情が確信に満ちたものに変わる。
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