166:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/20(土) 14:39:26.44 ID:e2KAc5lx0
「……でも、どうして私? 私、冬の花火のときも、駆くんに何もしてあげられてない。ただ、駆くんの気持ちが少しわかったような気がしただけ。なんにも……なんにもしてあげられてないよ?」
なんにもしてあげられてないなんて、そんなこと、あるものか。
安らぎをくれた。気にかけてくれた。色々なことをわからせてくれた。特別な場所に招いてくれた。幼い俺の夢を叶えてくれた。そして何より――、
「それで十分だよ」
透子は、俺の孤独に寄り添ってくれた。
「それでいいの……?」
いいんだ、本当に、透子はたくさんのものを俺にくれた。
あの日の花火の美しさが今も脳裏に焼きついているように。
たとえ一夏の出来事で終わっても、透子と出会えて、好きになれて、俺は幸せだった。
もちろん、このまま、いつまでも一緒にいたいと思う気持ちもある。
けれど、俺には俺のやりたいことがある。透子もそうだろう。
この夏、俺たちは巣立ちの時を迎える。
生きていくために、飛び方を覚えなくちゃいけない。
だから、今はそれぞれに、互いの進むべき場所を目指す。
そのせいで遠く離れることになっても、大丈夫。
望むなら、その未来はいつか必ず現実になる。
《欠片》の導きがなくたって、絶対に君を見つけ出す。
だから、これは別れなんかじゃない。
未来へ羽ばたくための、これは、約束。
「この街で君に会えてよかった」
いつかまた、出会った日のように。
「駆くんが、この街に来てくれてよかった」
一緒に花火を見に行こう。
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