28:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/07(日) 10:12:50.32 ID:4h98r15f0
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『YATAGLASS
studio』
透子から聞いた住所に着くと、烏の意匠の看板を掲げた建物がまず目に入った。ここが透子が待ち合わせに指定した工房だろう。電気が点いていたので、俺は正面の入り口ではなく、ガラス張りになっている側面へと回る。
透子は工房の中に一人でいた。Tシャツにジーパンというラフな格好で、髪を一つに結んでいる。作業中のようで、竿の先についたオレンジ色に煌めくガラスの表面を、特殊な紙か布のようなもので磨いていた。透子は慣れた手つきで、くるくると竿を動かし、ガラスの形を整えていく。
俺はそんな彼女の姿を黙って見つめた。扱っているものがものだけに不用意に声は掛けられないし、それに、誰かが一心に仕事をしている姿は、それだけで絵になるものだ。
しかし、鑑賞の時間は長く続かなかった。透子が俺の視線に気づいて振り返ったのだ。
「うっ、ああ……」
俺に気を取られているうちに、透子のガラスは、誰の目にも失敗だとわかるくらいに、ひどく変形してしまった。
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