3:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/03(水) 20:07:16.43 ID:DvK9a+dU0
『花火、少しくらい見ていかないのか?』
ほとんど歩く機械みたいになっていた俺を見かねたのだろう、《俺》が苦笑気味に言う。
『よせよ。俺は祭りが苦手なんだ。知ってるだろ?』
何も答えない俺の代わりに、もう一人の《俺》が俺を擁護する。すると、花火が見たいらしい《俺》は、納得いかないといったように言い返した。
『祭りが苦手、とはちょっと違うだろう』
『なら言い方を変える。祭りにはあまりいい思い出がない』
結局、《俺》は《俺》にやり込められてしまい、名残惜しそうにため息をついた。
『花火……綺麗だと思うんだがな。今日見逃すと、次はきっと来年だろうに』
来年――それは果てしなく遠くのことのように思えて、うまく想像できなかった。
高校を卒業して、来年の今頃、俺はどうなっていて、何をしているのだろう。
少しくらいは変われているだろうか。
今の俺に足りない、欠けている何かは、手に入っているだろうか。
それは、どこに落ちている?
どこを探せばいい?
どうしたら俺は完全になれる?
そもそも、俺に欠けているものとは一体なんなのか――。
思考がいつもの袋小路に迷い込んだ、その瞬間だった。
どんっ……!
と、ひときわ大きな花火が打ち上がり、そして、
《――やっと見つけた――》
「っ……!?」
不意に聞こえる、俺自身の《声》。
空耳や幻聴とは違う、《未来の欠片》と名づけた現象――それは今までにも何度もあった。
しかし、今回の《未来の欠片》はやけにはっきりと聞こえた。
それだけじゃない、《声》と一緒に『打ち上がる色とりどりの花火』までもが『見えた』。
実際の花火を、俺がこの目で見たのではない。俺はずっと下を向いて歩いていたから、見えるはずがないのだ。
なのに今、確かに花火が――立っている俺よりももっと地面に近い視点から見上げた花火が――見えた。
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