64:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/09(火) 12:11:21.45 ID:W+HAaMa50
「おまえ……っ!」
ほとんど挑発のような俺の言葉に、井美雪哉の顔がみるみると気色ばむ。
睨み合いは数秒続いた。先に目を逸らしたのは俺だった。
花火とやらには参加しない。用件は済んだ。もう彼と話すこともない。
「おいっ、待てよ!」
立ち去ろうとしたが、井美雪哉に肩を掴まれる。
その力があまりに強く、直接的な痛みに、俺もとうとう我慢の限界がきた。
「――高山から告白はされたのかい?」
振り向いて、彼を狼狽させるのにうってつけの一言をぶつける。
「っ……!?」
目に見えて動揺する彼に、残酷な気持ちが湧き上がってくる。
それは、羨望であり、嫉妬だった。
この街でずっと暮らしてきた彼らに対する、羨望と嫉妬。
透子の隣に寄り添って、彼女を外敵から守ろうと立ちはだかった永宮。
透子のことを近くから見てきて、自然に恋愛感情を抱くことができて、想いを告白することができた井美。
そんな井美雪哉に好意を持ち、傍らで支え続け、一方で透子とも親しい友人のままであろうとする高山。
当たり前のように一緒にいて、当たり前のように想い合う。
そんな当たり前の絆で結ばれている彼らが、羨ましく、妬ましい。
「まさか、まだ返事をしていないってことは――」
どろどろとした気持ちが、棘だらけの言葉となって吐き出される。
そして気づいたときには……。
「っ――!!」
目の前が真っ白な光で埋め尽くされる。
それが引くと、今度は視界いっぱいに青空が広がった。
じわじわと頬が熱を持つ。井美雪哉に殴られたのだと、理解した。
「…………っ」
身体を起こし、口元を拭う。鋭い痛み。手の甲を見れば、掠れた血の跡。
しかし、涙も、ため息も、恨み言さえ出てこない。
わかりきったこと。
こんなのは、最悪の、自業自得。
今の俺は――正真正銘の、バカだった。
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