76:名無しNIPPER[sage saga]
2019/04/09(火) 13:34:45.88 ID:W+HAaMa50
全ては、透子に出会ってから、変わった。
「……少しずつ、わかってきたんだ。俺が欲しがっていたのは、なんだかよくわからないピースみたいなものじゃない。もっとはっきりとした、もっと実体のあるものじゃなかったのかって」
俺が必要としていたのは、概念上の強さや完全さなどではなく。
弱く不完全な俺を、懸命に守ってくれる、絶対の味方。
隣にいて、言葉を交わして、その手に触れられる、誰かの存在なのではないか?
「それって……」
はっと、大きく開かれる透子の瞳を見つめ、俺は彼女の頬に手を伸ばし、そっと、触れる。
「君の声ばかりなんだ。聞こえてくる声が」
透子の《声》が聞こえれば。
透子が手を差し伸べてくれれば。
透子の心からの笑顔を見られれば。
そんなことばかり考えて、だから、君の《声》ばかり聞こえてくる。
「私も……駆くんの姿ばかり見える……」
透子も?
透子も、俺と一緒にいることを望んでくれている?
だとしたら、俺は辿り着いたのか?
俺は、透子の元に、君の隣に。
ここにいても、いいのか?
「俺……見つけたのか……?」
ずっと何か掴もうとして、空を切ってきた俺の手に。
透子の手が重なり、そのぬくもりがゆっくりと胸を満たす。
気づけば、俺の目から一筋の涙が零れ落ちていた。
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