78:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 20:40:03.38 ID:W+HAaMa50
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母さんが父さんの家に帰ってきた次の日、俺は早起きして例の高台へ行った。
考えていたのは変わらず透子のことだった。
『今までだって、好きな女の子いただろ?』
《俺》と話すのも久しぶりだった。《俺》の興味ももちろん透子にある。
「不思議な感触……以上の感じがしなくて」
今まで異性に一定以上の好感を持ったことはある。
だが、それはどうにもあやふやな、はっきりとしない気持ちだった。
当然、相手に想いを伝えたこともない。
しかし、透子はそうではなかった。
「我ながら驚いた」
こんな気持ちは初めてだ。
彼女と一緒にいたい、触れて存在を確かめたいと、強く思う。
『あんな天然な子が好きだったとは驚きだよ』
確かに彼女は予測できないことを言ったりする。が、それも透子の魅力の一つだ。
「悪く言うなよ」
たしなめるように言うと、『悪くないよ』と《俺》たちが苦笑する。俺も可笑しくなって、つられて笑ってしまった。
『《俺》たちが要らなくなるといいよな』
その一言に、俺は一瞬、胸がいっぱいになったような、切ない気持ちになる。
思えば、今まではずっと、彼らが俺を守ってくれていたんだ。
「俺……おまえたちのこと、嫌いじゃない」
俺の不完全な心が生み出した、想像上の話し相手。
彼らとしては、たぶん、もっと早くに役目を終えるつもりでいたと思う。
それが、もうそこにいるのが当たり前になるくらい、長い付き合いになってしまった。
……でも、おまえたちには、悪いと思うけれど。
あと少しだけ、俺のこれからを見守っていてほしいんだ。
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