87:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:42:28.11 ID:W+HAaMa50
「これ、あげる」
透子はそう言うと、鞄からきらりと光を放つものを取り出した。
乳白色の渦が巻く、群青と淡紅のガラス球。
「蜻蛉玉?」
「おそろい」
「……ありがとう」
それは透子の手作りらしく、紐が通されて身につけられるようになっていた。
そういえば、いつかの永宮も似たようなものを首に下げていた気がする。
透子なりの親愛の証なのだろう――自宅の工房で、一生懸命にガラスと向き合う透子の姿が思い浮かんだ。
俺は透子からの贈り物を受け取り、その確かな重みを手に感じながら、昨日のことを切り出す。
「少し、気になることがあるんだ」
「え?」
「透子が言ってた、『落ちる俺』って――」
「そうよ。絶対高いところ登っちゃダメだからね?」
妙に明るい声で言い含める透子。
そんな彼女に、俺は一晩考えた仮説を話して聞かせる。
「そんなことが本当に可能だと思っているのかい?」
「えっ?」
「大袈裟に言えば、俺はこれから一生、少しでも落ちる可能性のある場所には登れない」
しかし、そんなことは不可能だ。
171Res/212.06 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20