88:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/09(火) 21:52:33.62 ID:W+HAaMa50
「……じゃあ、どうすれば……?」
不安げな目でこちらを見る透子に、俺は肝心の問題提起をする。
「本当に、『未来の欠片』だったのかな……?」
それを聞いた透子は、「でもっ!」と声を大にして反論した。
「駆くんが『未来だ』って教えてくれたんだよ?」
その通り――『あれ』に《未来の欠片》という名前を付けたのは、他ならぬ、俺自身。
だが、透子と出会ってから《未来の欠片》は劇的に変化した。
二人でいれば映像と声の両方がわかる。そして単独で見聞きする《欠片》も、以前より明瞭なものになった。
今まで漠然とそうだと信じてきたことを鵜呑みにしていると、真実を掴み損ねるかもしれない。
俺の中でも結論が出ているわけではないので、強くは言えないが――。
「もう少し、よく考えたほうがいい」
「私、ジュース買ってくる!」
この話はこれでおしまい、とばかりに、透子は勢いよく立ち上がる。
「駆くんは、何がいい?」
「俺は水を……」
「私、子供の頃、大人がなんでわざわざお金出して自販機で水やお茶買うのか、ほんと不思議だったわ。横にハルピスウォーターとかあるのに」
急に饒舌になる透子を、悪いと思いつつも、俺は可笑しいと感じてしまう。
緊張したり動揺したりしたとき、突然本題と関係ないことを話し始めるのは、俺にとっての《俺》のような、透子のお決まりの癖だ。
子供っぽく振る舞う透子を見られて、なんだか急に親しくなれた気がして、微笑ましくなる。
しかし、まあ、これは完全に俺が考えなしだった。
せっかく海にデートしにきて、のっけからくどくどと小難しい話を始める男がどこにいるというのだろう。
透子が戻ってきたら、もっと何気ない、それでいて気の利いた話をしよう。
できるかどうかは、別にして。
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