91:名無しNIPPER[saga sage]
2019/04/13(土) 18:09:26.16 ID:sOMkQtx30
<第8話 雪>
「透子――ッ!?」
海のほうに走り出した透子に追いつき、俺はくずおれる彼女の肩を支えた。
「いや……っ! いやああああっ!?」
透子はひどい恐慌状態に陥っていた。とにかく落ち着かせなくては。俺は休めるところを探す。
「どこか、日陰っ……!」
俺の言葉に、高山が後ろを振り返る。休憩所のテントが見えた。俺は透子を抱き上げ、そこまで運ぶと、シートの上に寝かせた。
透子は悪夢に魘されるように唇を震わせ、ものすごい力で俺の腕を掴んでくる。
「っ……!」
瞬間、目が合って、透子の瞳に正気の光が戻った。
「――今の――」
弱々しく何かを呟く透子。しかし、それは高山の心配そうな声にかき消された。
「透子、大丈夫……? びっくりしたわよ。何があったの?」
「なにが、って――」
透子はふらつきながらも上体を起こし、眩暈を振り払うように首を振る。
「――ごめん、よくわからない」
「……とりあえずは、心配なさそうね」
「うん……」
透子が表面上は落ち着きを取り戻し、高山が安堵のため息をつく。
だが、俺の心臓は、なおもどくどくと不快な脈動を続けていた。
その不安を裏付けるように、透子の怯えた目が俺を捉える。
《――お似合いのカップルね――》
突き放すような高山の《声》とともに、透子へ襲いかかった鳶の群れ。
《未来の欠片》というには、あまりに不穏で、不吉な断片だった。
「うちまで送るわ」
なんと声を掛けるべきか迷っていると、高山が事態の収拾に動き出した。そうしてやってほしい、と頼む以外に、俺は何もできない。
「きっちり説明してもらうから」
高山は、透子だけでなく俺の様子もおかしいと気づいて、こっそりと、だが力強い口調で、そう告げた。
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