5: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 02:30:47.71 ID:zJUkddjZ0
人を不幸にしなければ生きていけない盗賊の俺ですら吐き気をもよおす腐臭を、ソイツは全身から放っていた。
全身を大きな外套で身を包み、その体格ははっきりとはわからない。かろうじて背丈が一七〇半ばと予想できる程度か。
黒い髪。泥沼のような瞳。
にわかには信じがたいが、歳の頃は二十歳に届くか届かないといったところ。
外套からわずかにのぞかせる右手に血に染まった剣を持つが、俺の視線は恐ろしいはずのその切っ先に定まらず、外套の下にどんな恐ろしいものが隠されているのかと必死に探してしまう。揺らめく外套を見ている内に視界が歪み、頭の中がぐわんぐわんと鳴き叫ぶ。
この世のモノとは思えない存在だった。
俺一人じゃ――いや、俺たち全員でも、勝てるわけがなかった。
「お前たちは、弱い者とだけ戦い、強い者からは逃げる」
すると、何の脈絡もなく“奴”は話し出した。視線はこちらに向けているが、果たしてその焦点は俺に合っているのか。まるでわからない。
「逃げられないとわかると、数で囲んで叩く。生存能力がきわめて高い」
褒められているのか、けなされているのか。
普通に考えればこれから俺を[ピーーー]前のなぶりにすぎないのだろうが、果たしてその普通をこの男にあてはめてよいものか。
“奴”は靴に着いていた血で線を引きながら、こちらに近づきながら言葉を続ける。
「そういう奴は嗅覚が強い。俺と目が合ってしまうと実力差と、異常性に気がつく。そして別に追ってもいないのに、追われていると勘違いして放っておけば延々と走り続ける。今のオマエのようにな」
「あ――」
そういう、ことだったのか。
つまり――
「道案内、ご苦労だった」
「……チクショウ」
コイツは上手く引きつけていると勘違いした俺の進路から待ち伏せ場所を読み、全力疾走する俺をはるかに上回る速度で回り込み、俺が着くころには仲間を殺し終えていたわけか。
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