何も無いロレンシア
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76: ◆SbXzuGhlwpak[sage]
2019/06/01(土) 03:34:14.89 ID:zJUkddjZ0
※ ※ ※



「アハハハハハヒャヒャヒャヒャヒャハヒハヒャヒャヒャヒャッヒャッ!!!」

 千年ぶりの奇跡の到来を、喉を掻きむしりながら歓喜の嬌声をあげながらもだえるものがいた。

 彼はロレンシアの逃げ込んだ廃墟を遠くからじっと見守り続け、誰よりもいち早く奇跡の到来を目の当たりにした。

 彼――シモン・マクナイトの目論見通りに。

「おお、おお聖女よ! 救世主にして偽りの秩序の創造者! 杖ではなく剣で封じた者よ! 貴女の過ちは正される! 千年の時を超え、このシモン・マクナイトが断罪する! 天を衝く神の塔を、地獄を封ずる天蓋に貶めた罪は私が贖おう! 鎖に繋がれ浄化されるその日を、運命に抗いながら待ち焦がれるがいい!!! アハ、ヒヒャヒハヒャヒャヒャヒャッヒャッ!!!」

 身を折り曲げて笑うその狂態を、イヴ・ヴィリンガムは隣で冷めた目で見ている。

 聖女の再来など予想外の出来事である。しかし今回の目的は達せられた。“あの人”なら、自分が持ち帰った情報を元に最善の手を打ってくれるに違いない。

 千年を超えた奇跡に動揺しつつも、すぐ隣での狂態に我に返り、そして“あの人”への信頼から落ち着きを取り戻す。

(ああ、そう言えば――)

 与えられた任務の重要さと、目の当たりにした奇跡について冷静に判断できるようになった頃。死ぬとばかり思っていた“何も無い”男が生き残れたことに気が付く。

(――殺しておくべきか?)

 これから起きる戦いの規模を考えれば、あの男が一人でできることなどたかが知れている。だがあの男の特異な在り方は、計算を狂わせる。“あの人”の計算を悩ませる“端数”にならなり得る。ならば端数は今のうちに切り捨てておくべきか。

(いいえ、止めましょう)

 あの男に下手にかかわること自体が悪手。考えなくてもいいことまで考え、やがて自滅の道を辿る。それよりも今は、隣の狂人とは違う本当の祝福をしよう。

 “何も無い”ロレンシアが生き残れたことを。

 そして祈ろう。聖女の傍らという渦中でやがて死ぬことになるが、それまでに自分の想いに気づけることを――


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