140: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/07/21(日) 22:24:04.44 ID:5cHyLcvM0
ある角を曲がると、暗闇の奥にネオンの光が輝いていた。音楽も漏れ出ている。こんな文字通りの『どん底』には似つかわしくないほど清らかな、だが力強さも秘めた歌だ
「そこさ」
「ほう……」
私は興奮していた。子供が悪戯に赴く前の如く。彼女が扉を開くと、漏れ出た音は本流となって耳に注ぎ込まれる
「お、親分。遅いじゃないっすか」
「悪い悪い、反省会の後お客さんを誘ってたら遅くなっちまってね」
「ど、どうも……」
「反省会の内容は後で教えるよ」
だが雰囲気には威圧的なものも混じっている
「ようこそ、どん底へ……注文は?」
私はこういう所に来たことはないが、どういう事をすればいいかは知っている。こういうのは柄になくはっちゃけるのが吉だ。ちゃんと財布の中身は確認済みだし
「……とりあえずビール。出来ればドイツのをお願いします」
「……ドイツビール?あなたお子ち……え?」
「え?」
何か変な事を言っただろうか。部屋にいたサメさんチームの全員が私を見つめている。歌も途切れた
「い、如何なさいました?私何か変なことを?」
なに、見るからにバーなのに、実はそういう所じゃないのか?
「……隊長、イケる口か?」
「いや、本物は無いですけど、前の学校にいた時に少しは」
「あ、そう……ほれカトラス、注文だぞ」
「……」
カトラスさんはすぐに冷蔵庫を漁り、一本の茶色い瓶を取り出した。歌も再び部屋中を飛び回り始め、私はお銀さんの隣のカウンターに腰を下ろした
「……お銀は?」
「いつものラム酒」
「……まいど。隊長、こいつで良い?」
「あ、それをお願いします」
ビットブルガー、懐かしい名だ。水滴をまとった瓶とジョッキがカウンターに置かれる
「……つまみは?」
「私はポテトを」
「あたしはパイプでいいや」
「……ムラカミたち、お代わりは?」
「とりあえずいいや」
「ラム酒もう一杯。もうちょい強いのない?」
「ノンアルに強いもひったくれもないだろうが」
「濃いやつよ濃いやつ」
「……高くなるよ?」
「ツケるから良いよ」
「ラム、お前今までどれだけツケてんだよ」
そう言いながらムラカミさんはニヤついている。ここではそういうのも日常茶飯事なんだろう
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