598: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/07(木) 20:56:37.54 ID:rYNwkNdDO
道の角で通りの向こうを伺っていた。特に異変はない。いや。異変はあるが敵ではない
「ねえゆかりん戻らない?あそこにいれば敵来ないみたいだし……」
一緒にいる武部殿が不安げな顔で尋ねてくる
「試合自体は全車輌撃破されたら負けですし、ここは黒森峰学園都市のど真ん中。見つかって最後に殺られるだけであります。味方が残っていて少しでも勝ち目がある内に合流しないといけません」
路上とその周りを再度確認する。燻る煙の臭いを払いつつ、銃の引き金に指をかけておく。もし居たら引けるのか、それは別の問題だ
「それに敵は偵察を投入しています。こちらが不利なのは火を見るより明らかであります。急がなければ」
「て、偵察ってしていいの?」
「偵察行為そのものは禁止されておりません。ただ、さっき会った人は大丈夫でしたが他の偵察の人が武装している可能性があります。黒森峰ならやりかねません
どうやらここにはいないみたいでありますな。行きましょう」
先に道へと飛び出すと、慌てて武部殿も続く
市街地に着いてから不思議に思っていたが、この付近、いや市街地のあちこちに、簡易的ながら塹壕のようなものが張り巡らされている。何かの準備かと思われたが、ちょうどいいので気にせず身を隠しながら移動するのに使った。しかし地上に比べて足場が安定しておらず、後ろの武部殿が時折つまづく
近くに爆撃に巻き込まれたのだろうか、足の関節が変な形に曲がった審判の遺体が転がっている。審判の立場を侵す行為が咎められるスポーツなど、寡聞にして知らない
これが本当に試合なのか、それともほかの何か……自分が好きな戦車を生み出した戦争、というものなのか
「ひいぃ、もうイケメンもお金持ちもいりません。生きてお家に帰してください……」
目に涙を浮かべながらついてくる。生きて帰るために死の危険に身を晒す、皮肉な環境に私たちはいる。その比較対象は兎も角
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