628: ◆ujHylXatJU[saga]
2019/11/14(木) 21:11:50.11 ID:JuXJT1NJO
シャツの上に上着を戻すと、片手の指でさっさとボタンをはめる
「さあ、私の最後のつまらない話はおしまいです。何ができるか分かりませんが、私も出発します」
ここまで来たら、この偽りを貫き通すしかない。彼女に対応する時間がない
優花里さんの手元に金属の塊と布を置く
「信号弾と白旗です。近くに人が来たらこれで助けを呼んでください」
荷物を纏めようとすると、目の先にあるものが目に入った。鼻のフレームが思い切りひしゃげた眼鏡だ。レンズも辛うじてフレームにくっついているという感じだ
死体をどうにもできない以上、数少ない遺品になる。それを手に取り、ポケットにしまおうとすると、連鎖的に重い金属音が耳に入る。見ると優花里さんの手元に置いていた信号弾用の銃が、少し離れた場所に移動している
「こんなものに……用はないであります……自分も……一緒に行きます」
深呼吸の合間に口を開いてきた
「行くって……無理です!動けるわけないじゃないですか!」
しかしその通りなのだ。腹筋繊維を一本残らず引き千切られた彼女は、上半身を起こす事も出来ない。動く、ましてやここから移動するなんて出来るはずがない。ここから彼女を移動させるとなると……手段はただ一つ
「大丈夫であります……お腹の痛みは感じなくなりました。連れて行ってください……お願いです……優勝のために……と死んだみんなのためにも……西住殿と一緒に……大洗の優勝を見届けるのであります……」
腕を伸ばし、涙を流して優花里さんは懇願してくる。どうする。そもそも彼女は置いて行くつもりだったし、彼女を運ぶ時間は今後のプランにとっては支障だ。だが……私にとって彼女は何であったか……
こう言えるほど効いてしまうモルヒネを少し厄介に思ったが、少し迷ったのち友としてその懇願に応える事にした。こうすれば賢くなれるのか、バカだから分からない
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