宮本フレデリカは如何にしてこの世を去ったのか
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21: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:29:48.67 ID:p0TmPlc30
「別にこれはクイズでも思考実験でもなんでもない。ただの事実として、ボーっと聞いてみて」

彼女は頷いた。


「ある哲学者がね、こんな事を言ったらしいよ」

志希はどこか遠いところを見て語り出した。

「『世界は五分前に始まった』ってね」

静かな店内に、彼女の声が響く。
フレデリカは黙って耳を傾ける。
グラスの中の氷が崩れ、涼やかな音がした。

「五分より前の物事は、『そういうもの』として周囲に記憶されて生み出されたに過ぎない」

「この傷の入ったグラスだって五分前に既に傷付いた状態で生まれたんだ」

「へ〜…なんだかすごい話だね」

「でしょでしょ♪でもこんなバカげた話を誰も否定できない」

「理論上否定のしようがないから、例えば…」

「あたし達は…だいたい40分前にこの店に入ったよね」

フレデリカは腕時計を見て頷く。

「実際は35分前に入ったという記憶をもってるだけで、五分前に入店したばかりのお客様なんだよ」

「アハハ、なるほどー!」

フレデリカは大きく口を開けて笑う。

「じゃあもうちょっとゆっくりしなきゃね!」

「そうそう、五分で出たら店に失礼〜♪」

二人は椅子に深く座り直す。
マスターは彼女達を呆れた目で見つめながら、足下に擦り寄ってきたキシを撫でていた。


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