27: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:36:33.93 ID:p0TmPlc30
「この辺の宿泊施設は〜・・・」
志希はスマートフォンをぐりぐりと弄る。
体調を崩したフレデリカを休ませるため、今日は早めに切り上げる事になったのだ。
「本当にもう泊まるの〜?大丈夫だよー!シキちゃんがくれた薬も効いてるし!」
構わず検索を続ける志希のリュックサックが、不意にもぞもぞと動いた。
「んー?どうしたのかな」
リュックサックの口を開くと、キシが勢いよく飛び出た。
「窮屈だった?」
差し出された志希の手をスンスンと嗅ぐと、チロッと舐めた。
猫は志希とフレデリカの顔を見る。フレデリカの脚に頭をこすりつけた。
「どうしたの?」
言葉に反応したのかどうか、猫は一度だけ「にゃあお」と鳴いた。
そして。
「あっ!キシちゃん!?」
猫は何処かへ駆け出した。
二人は追いかけたが、猫には追いつけない。
あっという間に何処かへ消えてしまった。
「キシちゃん・・・どうしたんだろ・・・」
「ここが気に入ったのかもね」
心配そうな顔をするフレデリカとは裏腹に、志希は平然としていた。
「野良猫は自由気ままなものだし、そっとしてあげよう」
「・・・・・・うん」
志希は、自分の胸元を見た。
Tシャツに付いた猫の毛を摘まみ、まじまじと見つめた。
猫の毛は風に煽られ、志希の手を離れ空に舞った。
志希は、諦めたように微笑んだ。
「またね」
61Res/62.52 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20