宮本フレデリカは如何にしてこの世を去ったのか
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37: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 17:49:09.83 ID:p0TmPlc30
彼女は男の養子になる事を笑って承諾した。
その時彼女の胸にあった感情はなんだろうか。
安堵ではない。不安とも違う。感謝、焦燥、恐怖いずれでもない。
絶望だった。深い深い絶望に彼女は包まれていた。
生まれて初めてのその感情に視界は灰色に歪み、手足は震え、頭はまるで動かない。
耳が塞がったように周囲の音が鈍く響き、なのに心臓の音がいやに大きくはっきりと聞こえ、
胸の奥から酸っぱいものがせりあがってくる。
それでも彼女は何事も無かったかのように、口元を猫のように緩ませた。

彼の提案、その意味を理解していなかったわけではない。
むしろ、全てに気付いていた。
彼が自分の両親を殺したこと。自分に手を出すこと。
彼が何かに狂っていること。
そして、そんな彼からの提案を拒否したら、何が起こるか分からない事。
仮に他の家庭に入ったとしたら間違いなくそこも悲劇に見舞われるだろう。
養子に入ること自体を止めて独り立ちしたところで、どの道男は一人の自分を襲うだろう。
むしろそれはまだマシな方で──
体を震わせる。


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