宮本フレデリカは如何にしてこの世を去ったのか
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51: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 18:02:48.89 ID:p0TmPlc30
静かな部屋に、二度三度彼女の声が反響した。
志希は腕を下ろし、壁にもたれかかる。
男は汗を垂れ流し、息を切らす。

「何を、バカな事を」

周囲をキョロキョロと見渡すが、何も起きなかった。

「宮本だと?何を・・・」

汗を拭い、志希を見る。
ぐったりと顔を伏せ、動く事はない。
ブラフか、命惜しさの時間稼ぎか、
何が目的かは分からないが、男は彼女の行動に心底恐怖した。
その事実にふつふつと湧いてきた怒りで眉を吊り上げ、
怒号を上げ彼女に詰め寄る。

「この、クソアマ!」

志希に刺さったナイフを掴み、切り裂くように引き抜いた。

「さっさと死ね!!」

声にならない悲鳴とともに、噴水のように血が飛び出る。
志希は再び崩れ落ちた。
出血量は明らかに致死量を越えている。
もう、二度と立ち上がる事はないだろう。
男は息を荒げ、血溜まりの中の彼女を一瞥する。

「ついに、殺した・・・一ノ瀬志希を、あの天才を」

血でベタつくナイフを見つめた。

「ついに・・・」

しみじみと言葉を繰り返し呟いた時、妙な違和感が彼を取り巻いた。
とても小さいが確かな違和感。何か、取り返しのつかない事をしてしまったような。

「俺は・・・さっき、なんと言った?」

「『さっさと死ね』、だと?おかしいぞ」

「俺は、何年も何年も一ノ瀬を嬲り殺すことだけを考えていた」

「可能な限り苦しませる事を・・・」

男は顔を上げ志希を見た。

筈だった。

「なっ・・・!?」

血まみれで壁にもたれかかっていたのは、彼の知っている金髪の女性だった。
目を擦り、再び見ると女性は一ノ瀬志希に戻っていた。
彼女は夕日に照らされ、金色に輝いていた。


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