58: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 18:11:04.47 ID:p0TmPlc30
男は叫んだ。感情を上書きするように自身の頭髪を引きちぎり、壁に頭を叩きつけた。
「俺は、貴様を、殺す為に!だから、貴様を・・・」
「俺の、人生は、貴様を殺す為に!!なのに、なのに!!」
地団駄を踏み、舌を噛み、顔を掻きむしった。
やがて彼は蹲り嘔吐した。彼の吐瀉物は白く、何も含まれていなかった。
息を切らしながら顔を上げ、視界に彼女が映る。
力なく微笑む彼女の瞳が、月のように輝いた。
「う、ああ・・・うあああああああああ!!!」
彼は再び絶叫した。
彼女に背を向け、出口に走る。
足がもつれ、ドアノブに勢いよく口元をぶつけた。
口から血を垂れ流し、ガチャガチャと激しくドアノブを回すが開かない。
彼女とドアノブを交互に見つめ、何度も何度も回した。
やがて自らが掛けた鍵に気付くと、慌ただしくツマミを回す。
今度こそ扉を開けると、段差に躓きながら脇目も振らずに逃げた。
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