宮本フレデリカは如何にしてこの世を去ったのか
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59: ◆xa8Vk0v4PY[saga]
2020/05/04(月) 18:11:52.96 ID:p0TmPlc30
彼女の最後の言葉で、彼の世界からは彼女以外の全てが消え去った。
金髪の女性はもちろん、赤信号にも、道路を走る自動車にすら気付かないだろう。
彼女は走り去る男を虚ろな瞳で見つめていた。
視界は霞み、今にもこの世を去るだろう。
彼女はピクリと体を動かそうとした。
後ろを、ベッドを、彼女を、生まれてきた意味を、最期に見ようと。

だが・・・無理だった。
もはや指一本、動かす力も残っていなかった。
痛い、苦しいというより、少し寂しそうだった。
ぼんやりと、男が開け放ち、開いたままの扉を眺める。
ゆっくりと、ゆっくりと瞼が閉じていく。

その直前。

扉から入ってくる、黒い毛玉のような物が瞳に映った。

「にゃあお」

それは、黒猫のキシだった。
猫は血溜まりに足を漬け、彼女の元へ向かう。
彼女の真っ赤な手に自身の頭を持っていく。
しかし、彼女が猫を撫でる事はなかった。

「にゃあお」

彼女の顔をまじまじと見つめると、一度だけ頬をペロリと舐めた。
彼女は満足そうに微笑んでいた。
彼女の名前は「宮本フレデリカ」だった。


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