105: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:16:18.01 ID:iX/HvtXE0
ふいに、横で声がした。
「ねえ、二階のベランダは開いてるかしら?」
私はぎょっとして声のする方を振り向いた。
どうやらそれは紗枝ちゃんの呟きらしかった。
しかし彼女は何か考え事をしているように部屋の隅を見つめたまま、私の返事などまるで期待していないようだった。
束の間、私はそんな彼女の幼すぎる横顔に驚きながら見入っていた。
やがて彼女が少年のようなしなやかさで私の方を振り向いた時、そこにはもう、紗枝ちゃんの面影はなかった。
「連れて行ってくれるんでしょう?」
気が付くと私はハルの手を握っていた。
冷たい手……その病人の肌の感触が一瞬、ノラを怖気づかせた。
が、ノラは迷いを振り切るように乱暴にハルの手を引っ張ると、そのままずかずかと廊下を歩いて行った。
ハルは、そんな怒ったようなノラに引かれながら、嬉しいような、嘲るような微笑を浮かべ、黙ってあとについていくのだった。……
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