114: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:24:55.68 ID:iX/HvtXE0
十二
その日、私はフルートのレッスンでスタジオに入っていた。
年明けに定期演奏会があり、今はそれに向けて少しずつ練習を重ねているところだった。
その演奏会も、もしかしたらこれが最後になるかもしれない。
そんな想いで私は、この日のレッスンに臨んでいた。
もちろん、大学に進学した後もフルートを続けるつもりでいる。
しかし私が東京に来てから定期的に参加しているこの演奏会は、もともと先生が手がけている音楽教室の合同発表会という名目で開かれている。
つまり、もし仮に、私が進学を機にアイドルを辞めてしまった場合、先生のご指導も同時に受けられなくなり、すると私が演奏会に参加する理由も資格も自動的に失われてしまう。
とはいえ、一応、事務所を通してでなく個人として先生の教室に通い続けるという選択肢もあったし、そもそもアイドルを辞めるかどうかも決めかねている今、これが最後の演奏会などと考えるのはやや早計かもしれなかった。
ただ、少し前からアイドルのお仕事を減らしているのは事実だった。
以前、プロデューサーさんに薦めていただいた大きなお仕事を断ってしまってから、私はアイドルらしいことはまるでしていなかった。
表向きは学業に専念するためということになっていたけれど、大学はエスカレーター式で決まっていて受験勉強の必要もなかったし、正直なところ今の私にとって一番大事なのは紗枝ちゃんと過ごす時間だったので、自然、アイドルのお仕事を続けていく動機も薄れてきてしまったのである。
それを、恋愛事にかまけてばかりでやるべきことを疎かにしていると言われたら、返す言葉もない。
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