水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
1- 20
118: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:28:33.40 ID:iX/HvtXE0

私は重たい足をやっとのことで動かしながら駅までの道のりを歩いて行った。
耳の奥がざわざわと鳴っている。
途中、何度か眩暈を覚えて立ち止まり、それから自分のいる場所を確かめるように辺りを見回した。


私はここにいる。

けれど一歩、踏み出すごとに、分からなくなる。

私はどこへ行こうとしているのだろう?

まるで世界で私だけが取り残されてしまったようだった。
私は、その場にうずくまりたい気持ちを懸命に抑えながら、無意識のうちにその名前を口にしていた。


紗枝!


私は助けを求めて叫んだ。
そして思った、私を助けてくれるのは彼女しかいないと。
彼女さえ隣にいてくれたらそれ以外には何もいらなかった、たとえそれが彼女の愛に覆われた盲の檻の中だったとしても、私はそこでしか生きる方法を知らなかったのだ。


駅に着いてすぐ彼女に電話をした。

呼び出し音が鳴っている間、私は人混みに流されてしまわないよう、建物の隅にじっと佇んで携帯を耳に押し当てていた。

しばらく経って、はい、と間延びした声が聞こえた時、安堵のあまり思わず目に涙が浮かんだ。

今すぐ会いたい、そう言うと、紗枝ちゃんは何ということもなく、ん、とだけ答えて、それから二、三、言葉を交わしたあと、私は電話を切って急いで電車に乗り込んだ。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
192Res/249.13 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice