123: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:33:40.23 ID:iX/HvtXE0
目的の駅に着き、私たちは電車を降りた。
紗枝ちゃんが何も言わずに私の手を握り、人混みの中を少し先に歩いた。
改札を通り、駅を出ると、見慣れた街の風景がいつものように私たちを迎えた。
頭上には、冬の気配のする、灰色の厚い雲が低く垂れこめていた。
駐輪場の手前で、紗枝ちゃんがふと足を止めた。
「考え直してくれた?」
私は首を横に振った。
紗枝ちゃんはいよいよ嫌悪の表情をにじませながら、そんな自分自身を落ち着かせるようにゆっくりと溜め息をついて、言った。
「うちのことはもう、どうでもええの?」
「そんなことない!」
「なら新しいお仕事なんかよして」
「どうして? 私がアイドルを続けても、紗枝と離れ離れになるわけじゃない」
「うち以外の子とゆにっと組んで、うちの知らんとこでお仕事して、それでもうちを忘れないって、ほんまに言える?」
「忘れたりなんかしない。それに、大学に行ったら一緒に住むんでしょ? 何も不安に思うことないよ」
「うちはいや。たとえ一緒に住んでても、二人別々の道に進んでもうたらきっと心も離れ離れになる」
「私は、そうは思わない……」
すると紗枝ちゃんはとうとう涙を浮かべ始めて、私を憎々しげに睨みつけた。
「こっちの気も知らんで! うちかて好きであいどる辞めるわけちゃう! そら、うちがあいどるで食っていけるくらい売れてたら、親の反対なんか知ったことやない、どこまでもゆかりに付いて行きます。二人でゆにっと組んで、一緒に楽しくお仕事して……なんぼ夢見たか分からん。けど、現実はそんな上手くいかへんかった。それも全部、うちのせい言うんどすか?」
「違う、そんなこと……!」
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