水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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13: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 08:57:38.13 ID:iX/HvtXE0

彼女と初めて出会ったのは私がこの寮に越してきた時、つまり二年前のことになるけれど、彼女とこうして親しくお話ができるようになったのはつい一週間前のことである。

きっかけは、あるドラマ番組での共演だった。

というより、今まさにそのドラマの撮影に向けて二人で親睦を深めようとして、それで彼女を私の部屋に招いたのだった。

それまで私たちは寮の同じ階に住んでいながらほとんど接点がなく、お互いなんとなく顔見知りな関係のまま長い間すれ違っていたのが、一緒にお仕事をすることが決まって挨拶を交わすや否や、すぐに打ち解けて仲良くなった。
同い年で、誕生日も同じという事実が判明すると、なおのこと親近感がわいた。
二人で話していると、それがかえって私たちのこれまでのすれ違いが不自然に感じるほど、なんだか昔からの知り合いだったように思われてくるのだった。

ただ私と違うのは、彼女が私よりもずっと売れっ子のアイドルという事である。

とは言っても、それは私より比較的人気がある、という程度の意味合いでしかなく、本人も認めているように、たぶん世間では私も紗枝ちゃんも無名という点ではそう変わらないのかもしれない。

だから今回のドラマで私が主役に抜擢されたことについて、紗枝ちゃんのファンから不平不満の声が噴出した、などという話はとくに聞かれなかった。
むしろ、スタッフの方々から期待の声をかけられたほどである。

役者なんてまったく経験のない私がいきなり主役を演じることになったのは自分でも驚いたけれど、ともかく私は、一生懸命がんばろうと思った。
各話たった一〇分の連作短編ドラマとはいえ、私にとってはようやく手にした大事な、大事なお仕事だったから、いい加減な気持ちではいられないと思った。



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