130: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:40:16.34 ID:iX/HvtXE0
「ほんまに、ええお笑い種どす。親を見返そう思て東京まで来て、あいどるになれたはええけど結局、ここでは通用しいひんかった。悔しい、こんなはずやないって、挙句の果てにプロデューサーに取り入って、もっと上の、お偉いさんとこも行った。そこでうちは、うちは――」
「やめて!」
私は叫んだ。彼女は話し続ける。
「……それでも、だめやった。身体を売っても、この世界ではそれが普通なんやって、思い知っただけやった。結局、うちは最後まで半端もんのまま、残ったのはこの汚れた心と身体だけ……なぁ、ゆかりはん? うちはもう、疲れたんどす」
「……ああ……ああ……!」
苦しい。苦しい……
頭の中が、ぐちゃぐちゃになって、立っていられない。
言葉にならない声が、喉から漏れる。
とめどなく涙が溢れてくる。
視界が滲んで、何も見えない。
耳の奥が熱い。
助けて、紗枝、助けて――
叫びたくても、思うように息ができない。
「これで分かってくれはった? うちのこと、可哀想やと思てくれはる? 同情してくれはる? ならうちのために、あいどるなんか諦めておくれやす。そしてもう一度、愛して。うちのこと愛してよ!」
分からない。
私は一体、どうすればいいのだろう?
今はただ、苦しい。何も、考えられない。考えたくない……。
「……かわいそうなゆかり。うちみたいな女を信じたばっかりに、傷ついて、苦しんで、もがいて……けど、うちは諦めへん。どんな手を使っても、逃がしまへん。ゆかりを傷つけてええんはうちだけや。誰にも渡さない。絶対に」
出口のないトンネルの中で、彼女の声が果てしなく反響して私の耳にこだました。
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