133: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:44:22.09 ID:iX/HvtXE0
そして、そこには誰もいなかった。
私を呼びかけていた声も、私を安心させてくれるはずの何物もここには存在していなかった。
そうして私はようやく気づいたのだった。
私を呼んでいたのは他ならぬ自分自身だったのだと。
私は孤独だった。
どうしようもなく独りだった。
深い暗闇の中に、かつてない不安と恐れとが生まれつつあった。
見えない恐怖が、私の目と鼻の先で息づいていた。
そうしてそれらは暗闇を貪りながら肥大化し、やがて私をも飲み込んでしまうに違いなかった。
けれど不思議なことに、そこには同時に力強い意志も目覚めつつあった。
今や私ははっきりと感じていた、孤独は私を脅かしはする、けれど決して敵ではないのだと。
孤独は私の力だった、そして今こそ私は孤独を友として生きなければならないと。
私は顔を上げて紗枝ちゃんを見た。
彼女は静かな表情で相変わらず私を見つめていた。
そしてふと思った、彼女もまた私と同じように孤独の中に生きている人なのだろうか、と……。
確かに、かつて彼女の瞳に見た冷酷な情熱は、私が記憶の底に見い出したあの冷たい静寂と似ていた。
彼女の心はいつも焦がれていた、私がどんなに深く潜り込もうとしても決して届かないその透明な炎によって……
そして私もそんな彼女の激しい情熱を愛していたはずだった。
しかしそれは寂しさと弱さのための孤独ではなかったか?
……
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