134: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:46:00.97 ID:iX/HvtXE0
私は歩き出した。
背後から紗枝ちゃんの声がした。
「どこ行くん!」
私は振り返って答えた。
「ごめんなさい」
その時の、彼女の絶望した表情が忘れられない。
身を引き裂くような喪失の痛みが、彼女の眼差しから伝わってくる。
哀れみの言葉が喉元まで出かかった。
彼女を助けてあげたいと思った。
けれど私には、彼女を救う言葉など何も持ち合わせていなかったのだ。
私は被っていた帽子を脱ぎ、彼女に差し出した。
「これ……返すね」
紗枝ちゃんは無言で私を睨み返すと、怒りに任せて私の手から帽子を叩き落した。
私はしゃがみこんで帽子を拾い上げ、土埃を払って片手に抱えた。
そうして怒りと絶望に震える彼女を残し、私は踵を返して歩いて行った。
…………。
…………。
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