142: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 13:56:29.38 ID:iX/HvtXE0
私は濡れた身体のまま立ち尽くし、選択と決断を迫られていた。
もしかしたら再び大きな過ちを犯すことになるかもしれないこの愚かな希望が、熱湯と湯気と彼女の美しい裸姿に、そしてそこに懐かしく疼きだした情とによって、私を最後の審判にかけようとしている……。
……私は彼女の居るすぐ横に立つと、湯船に足を差して、それからゆっくりと浸かって入った。
そうして彼女の隣に並ぶと、あの誕生日の温泉旅行を思い出して、つい、切なさに溜め息のような鳴き声が漏れた。
泣いてはいけない、この痛みを言い訳にしてはいけない、そう思いながら私は、湯水の中で膝を抱え、しばらくじっと耐えていた。
彼女は相変わらず私の方へは注意を向けようとしなかった。
けれど先ほどのように拒絶するような素振りも見せなかった。
私は、そんな彼女の無関心な態度をありがたいと思う一方で、いよいよ身動きが取れずに押し黙ってしまった。
いまさら何を言っても手遅れだと分かっていながら、私の頭には謝罪の言葉だの、体調を気遣う言葉だの、無意味な台詞ばかり次々に浮かんでくる……。
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