水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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15: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 08:59:28.44 ID:iX/HvtXE0

結局その日、私たちは一緒に夕食をとり、一緒に寮のお風呂に入り、そのあと今度は私が紗枝ちゃんの部屋に遊びに行って、テレビや雑誌、お仕事や勉強の話なんぞを延々と話し込んで、そうして夜が更けると紗枝ちゃんが「今日はこのまま泊まったらええのに」などと言うから私もすっかりその気になってしまって、なんだか修学旅行のような、合宿のような一夜を過ごすことになったのだった。


……この時の、思いがけず急速に近づいていった私たち二人の関係には、そこに何か失ったものを互いに埋め合わせるような執着心がすでに生まれつつあって、そうして私たちはそれを知らず知らずのうちに、後に私たち自身をも苦しめ出すような、美しい色をしたあの神秘の毒花へと育てていってしまったのではないかと思う。
あのたそかれどきのベランダ、東京の夜めいていく風景、それをぼんやりと見つめて思いつめたように押し黙っていた二人、その沈黙の向こうに聞こえていたふるさとの残響……
私たちの追憶はそこでぴったり重なったのだ。

それは束の間の白昼夢のようなものにすぎないけれど、かえってこうした何でもない一瞬が、いつかきっと、自分たちでも驚くくらいにはっきりした映像となって、記憶の底に蘇ってくる日があるような気がする。

そしてその時こそ、私と彼女との運命を決定的なものにした悪魔が姿を現すような予感がするのだった。



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