154: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 16:54:08.97 ID:iX/HvtXE0
演奏会当日、外は雲ひとつない青空だった。
そんな清々しい空模様とは裏腹に、大気は凍てつくように冷たい。
冬らしい、からっとした日差しに元気付けられるように、朝、私はコンサートホールに向かっていた。
会場に集まり、挨拶と軽いミーティングをした後、準備が始まった。
受付の配置、ステージのセッティング等を済ませ、あとは昼食までの間、リハーサルをおこなう。
調子は、悪くない。
指は温まっているし、緊張もコントロールできている。
リハーサル後、私たちは早めのお昼を取ると、午後の開演時間まで少しの間、暇になった。
私は他の出演者の方々と談笑して時間を潰していた。
今日は母が見に来るんです、そう言うと、先生が、
「あら、そうなの? じゃあご挨拶しないといけないわね」
とおっしゃって、すると他の方々も、「お母さまは何か音楽をやっていらっしゃるの?」とか、「青森から? それはまた遠い所から……」等々、話題が私の家族や故郷へと移っていった。
そんな本番前のリラックスした空気の中、私はそれらの会話に快く興じながら、一方、内心では別のことを気にかけてばかりいた。
もしかしたら今日、彼女は来ないかもしれない……
そんな予感が胸をよぎった。
それは、不安、というよりも、諦めに近い心境だった。
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