155: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 16:54:44.83 ID:iX/HvtXE0
どちらにせよ、今は目の前の本番に集中しよう、そう思って、彼女のことは一旦頭の隅に追いやった。
しかし午後、受付が始まると、私はやはり気が気でなくなって、エントランス付近の物陰にこっそり隠れ、人の出入りを注意深く観察したりしていた。
すると、しばらく経ってお母さまの姿がお見えになった。
さりげなくお声をかけると、お母さまは例の慎ましやかな微笑を浮かべ、少し早く来すぎたかしら、とおっしゃった。
私は、あちらへ、とロビーに案内して、そこで少しの間、お茶をご一緒しようとして、席に腰掛けた。
「ゆかり、時間は大丈夫なの?」
「うん。もう少ししたら、着替えないといけないけど……」
言いながら私は、相変わらず受付の方をちらちらと横目に見てばかりいた。
お母さまは、そんな私の不審な態度を見かねてか、
「お母さんのことはいいから、行ってらっしゃいな」
そうおっしゃって、急かすように私を立たせると、一人優雅にお茶を啜られた。
私は小さく手を振って、気もそぞろにエントランスを横切って行った。
まだ開演まで時間があるとはいえ、準備の都合で私もあまりのんびりしていられない。
会場には少しずつお客さんが増えてきていた。
けれど、やはり紗枝ちゃんの姿は見当たらなかった。
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