156: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 16:55:23.48 ID:iX/HvtXE0
私は諦めて控え室に戻った。
制服に着替え、すでに出演者のほとんどが待機しているバックステージへと向かう。
気負うような雰囲気ではないけれど、さすがに直前ともなると、小声でおしゃべりする団員の間にもそれなりの緊張感が漂っている。
私は居住まいを正し、深呼吸した。
舞台に上がる前のこの高揚感が、私は好きだった。
それはアイドルのお仕事をしていた時も同じだった。
自分を表現するということ、自分はここにいるということ、それをたくさんの人に伝えられるということを、何よりも実感できるのはいつだってステージの上だった。
開演のアナウンスが鳴る。
舞台袖から一人ずつ壇上にあがり、拍手で迎えられながらそれぞれの位置に着く。
ここから見ると決して小さくはないホールには、奥の方まで客席が埋まっている。
思わず目を凝らして観客ひとりひとりの顔を眺めだした私の前方に、マイクを手にした先生が颯爽と現れる。
開演の挨拶、それから今回演奏する曲目の簡単な解説をしたあと、指揮者の方が登場し、拍手に迎えられながら指揮台に上がる。
やがてオーボエから始まるチューニングの音が漣のように広がり、ホールをひとつの調和で満たしていく。
音が止み、指揮棒が上がる。
そして、一呼吸置いた後、流れるように曲が始まった。
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