水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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163: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 17:04:48.06 ID:iX/HvtXE0

ただ、それとは別に、やはり彼女のことが心配だった。
あの時の、やつれた細い身体、覇気の失せた表情を思い出すと、もしかしたら、という不吉な考えが頭に浮かぶ。

しかし結局のところ、私は紗枝ちゃんの安否を案ずるだけ案じて、実際に何か行動を起こすことはなかった。
目の前の一日一日をひた走ることに夢中で、言ってしまえば、必要以上に過去を振り返るほどの余裕がなかったのである。
事実、アイドルのお仕事が一段落ついた時、あるいは大学が夏休みに入った時には、それまで忙しくて手の回らなかったフルートのレッスンや演劇サークルに参加したり、また別の日には友達と一緒に遊びや旅行に行ったりしていて、それこそ暇らしい暇なんぞまるでなかったのだ。

……いや、その言い分は少し違う。
私はきっと恐れていた。
何もせずに立ち止まったら今度こそ過去に追いつかれてしまうと思って……
過去は常に暇と退屈の中に潜んでいた、だからこそ私は一人の時間を憎み、そこから逃れようともがいていたのだった。



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