164: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 17:05:27.72 ID:iX/HvtXE0
そして私は後に思い返す。
この、繁忙の熱狂に我を忘れたように生活していた日々こそ、かつて私が思い描いていた幸福のひとつの形だったのではないかと。
アイドルを志し、青森の駅で家族と別れたあの日からいつか歩むことになると約束されていた運命の道を、気付かぬ間に通り過ぎていたのかもしれないと。
この狂気に満ちた街に暮らす多くの人々と同様、私もまたその狂気を飼い慣らしつつあった。
そしてそれはほとんどの場合、私自身の生活との闘いだった。
幸福とは、こうした闘いの果てにあるものではなく、闘うことそれ自体がすでに幸福の原型なのだと、私はずっと後になって知ることになる。
が、少なくともこの時の私は、不安や焦り、あるいは愛すべき人を失ったことへの後悔から、それらの心の隙間を埋め合わせるために、ただやみくもに走り続けていただけのように思われてならない。
いずれにせよ私は、狂気の中に身を投じ、背後を過去に脅かされながらも決して闘うことをやめなかった。
私を突き動かしていたものが何であれ、この道の行く先にはきっと私が追い求めていた理想の世界があるはずだと、そう思っていたのだ。
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