168: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 17:09:53.54 ID:iX/HvtXE0
この、出来すぎた偶然のようなチャンスを、果たして幸運の一言で片付けてしまっていいのだろうか?
私は驚きと喜び、それからこの数週間悩み続けた切実な苦しみを思って、つい、プロデューサーさんの前でぽろぽろと涙を流してしまった。
プロデューサーさんはそんな私を慰めながら、また彼自身、報われたことの感動から涙を堪えている様子だった。
が、私は必ずしも希望的な安堵から感情を昂ぶらせたのではなかった!
この運命のいたずらとしか言いようのない偶然に、私は心から畏怖の念を抱いていた。
もし私が少しでも決断を早めていたら、あるいは先方からの電話が数日でも遅れていたら、私はきっと紗枝ちゃんと同じ道を辿っていただろう。
結局のところ、私自身の臆病さとたった一度の些細な偶然、それだけで私たちの未来はこんなにも違うものになってしまうのだ。
その時だった。
私の脳裏に、紗枝ちゃんの懐かしい笑顔がはっきりと浮かび上がった。
私はハッとした。
――今こそ彼女を救うべき時なのではないか?
私はようやく彼女を愛する資格を得たのだと気付いた。
すると、これまで封じ込めていた過去が突然、不思議な輝きと情熱を帯びて私の心を焚きつけだした。
私に課せられた責任とは、まさに彼女への愛を再び自分自身に蘇らせることではなかったか?
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