水本ゆかり「人形の檻」【ゆかさえ】
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171: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 17:12:23.86 ID:iX/HvtXE0

私は困惑していた。
それこそ夢を見ているような気分だった。
こんなにも唐突に、何の前触れもなくやってきた彼女との再会をどう受け止めればいいか分からなかった。

私は興奮に息を詰まらせながら彼女の背中に手を回し、ひとまず部屋に招き入れた。

扉を閉め、私たちは薄暗い玄関で向かい合って立った。
私は明かりを点けるのも忘れ、ただ一言、「どうして」と呟くことしかできなかった。

彼女はまだすすり泣いていた。
私の顔もまともに見ることができず、嗚咽交じりの呼吸を引き攣らせながら涙を懸命に拭っている、その痛々しい姿はまるで迷子の子供のようだった……
いや、彼女は実際、今までずっと迷子だったのだ、と私は思った。

「紗枝ちゃん、もう、大丈夫だよ。だから落ち着いて、ね? ……」

私は自然に、考えるよりも先に彼女を抱きすくめていた。

びしょ濡れの彼女の身体は私の腕の中で震えていた。
それが嗚咽の痙攣なのか、寒さによる身震いなのか、咄嗟に判断できなかった。
私は、とにかく彼女を落ち着かせなければと思って、その泣き腫らして真っ赤になった頬にそっと両手をあてがった。

雨と涙に濡れた肌はぼんやりと熱がこもっていた。
不審に思い、額にも触れてみると、やはり少し熱っぽかった。

「大変……!」

私は慌ててタオルを取りに部屋に戻った。
紗枝ちゃんは玄関の壁に寄りかかったまま朦朧としていて、何やらうわ言のようなことをぶつぶつと呟いていた。



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