173: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 17:14:11.51 ID:iX/HvtXE0
紗枝ちゃんがふと目を覚ました。
まだ少し朦朧としているらしい濁った視線を宙に向けて、それからようやく、横にいる私を認識したようだった。
私は、こみ上げてくる切ない気持ちをぐっと堪え、にこりと微笑んでみせた。
彼女は瞼を痙攣させながら、私の手を包むように自らの手をそこに重ね、
――気持ちいい――そう呟いた。
「お水。飲めそう?」
コップを差し出すと、彼女はふらふらと上体を起こし、私に背中を支えられながら水を飲みだした。
私は次にりんごを一口、差し出した。
「食べる?」
彼女はこくりと頷くと、力なく口を開け、しゃり、と食んだ。
私は、彼女がゆっくりと咀嚼する様子を黙って眺めていた。
その後、残りのりんごと雑炊を少し食べ、お水を飲むと、彼女は再びぐったりとベッドに横になった。
そして、私が濡れタオルを準備しようと立ち上がったら、ゆかり、と呼び止められて、振り返ると、
「……ごめんなさい」
だしぬけに紗枝ちゃんがそんなことを言い出した。
「大丈夫、気にしてないよ」
しかし彼女はそれでも、ごめんなさい、許して、と何度もうわ言のように繰り返した。
そうして私が、「お水、持ってくるね」そう言って離れた後も、ベッドからは、ゆかり、行かんといて、と弱々しく呼び続ける声が聞こえていた。
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