177: ◆wsnmryEd4g[saga]
2020/10/18(日) 17:17:01.24 ID:iX/HvtXE0
「七度三分……微熱だね」
おそらくただの風邪だろう。
とはいえ一応、病院には行った方がいいかもしれない。
そう言ったら、彼女はやはり首を横に振って、もう平気、と意地を張るように答えるのだった。
そして、体調が徐々に回復してくると、私の心配をよそに「もう帰ります」などと言って、しきりに立ち去ろうとした。
私は彼女を逃さなかった。
少なくとも事情が判明するまで、彼女を一人にはしておけないと思った。
というのも、私は昨晩、紗枝ちゃんの身体をタオルで拭いた時に、その腕にとある異変を発見していたのである。
「手首の傷……自分でやったの?」
彼女はびくりと肩を震わせた。
そして気まずそうに私から目を逸らし、左手首をそっと押さえ、黙った。
彼女の自傷行為について、私はもちろんショックを受けていた。
気付かなければよかったと、あるいは何かの間違いであってほしいと、先ほどまではそう思っていた。
が、今や私の心のうちには、憐れみや悲しみよりももっと深い感情が、それこそ私自身、今まで感じたことがないくらいに激しく燃え滾っていた。
それは怒りだった。
紗枝ちゃんのあの美しい肉体が、気品と情熱に満ちた精神が、彼女自身の手によって傷つけられていると知ると、言いようのない焦りと苛立ちを感じた。
そして彼女をそこまで追い詰めてしまった原因が自分にもあるのだと思うと、やりきれなかった。
だから私は、これ以上彼女を傷つけさせないためにも、今は私の目の届く範囲に置いておかなければならなかった。
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